2013年12月07日

『ミレニアム・マンボ』(渡邊利道)


《プログラムブック版「北海道SF大全」再掲にあたって》
 日本SF評論賞受賞者有志は、去る2012年7月7日〜8日に開催された夕張での第51回日本SF大会(Varicon2012)を応援するために、大会参加者に限定配布された「Varicon2012プログラムブック」へ600字程度の「北海道大全」(北海道に関したSF作品のレビュー)を寄稿しました。
 それぞれの原稿が扱った題材は、Varicon2012の公式サイト(http://www.varicon2012.jp/index.html)で連載されたものと重複しますが、単なる縮約にはとどまりません。より広い読者へ向け、SFの意義を提示する開かれた文章を目指しました。このたび、その意義をご理解いただいた関係各位の許可を得て、「21世紀、SF評論」において、連載という形で再掲していきます。ご笑覧いただけましたら幸いです。(岡和田晃)

『ミレニアム・マンボ』
監督:侯孝賢(台湾・フランス合作)
初出:ハピネット・ピクチャーズ、ビターズ・エ
ンド 2001 ※日本公開時
最新版:ハピネット・ピクチャーズ 2003 ※
DVD 版
担当:渡邊利道
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 台湾の巨匠侯孝賢が2001 年に発表した長篇劇映画。それまでの台湾の過去を描く作風から「現在を描く」と転回を宣言、シナリオを用意せず即興演出と偶然もふくめ画面に映った素材を繊細に組み合わせた独特のスタイルで、世間によくある三角関係の物語を、2011 年の女性の視点から「十年前のあの頃」と回想する、不思議な《近未来》を描いた作品である。
 物語は台湾と日本を舞台として展開するのだが、台湾の大都会台北や、日本の新宿が荒涼たる風景のなかでリアルに描かれるのに対し、ヒロインがほんの思いつきで訪れる北海道の夕張の、まるで夢の中のような美しさはまさしく言語を絶するものがある。
 侯孝賢は、映画祭で訪れた夕張についての印象を「雪がいっぱいで、まるで欧州みたいだと思いました」と語っている。日本植民地時代の台湾を描いたこともあり、また成瀬や小津への敬愛を隠さない彼にとって「日本」のイメージから北海道はまた少し逸脱する夢の世界なのだろう。紫煙を吐いて歩く本作のヒロインの姿には『突然炎の如く』に登場する「機関車」の少女が透けて見え、北海道が欧州と繋がり、夢のような場所が映画の中にひろがる。この映画が製作公開された年には、まだ夕張は財政破綻するずっと前だったわけだが、すべてを失ったヒロインの旅立ちを感じさせる、無人の商店街のアーケードで夜明けとともに大量の鳥が飛ぶラストシーンには、夕張という町に対する静謐な再生への祈りが込められているかのようだ。
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