2013年02月17日

『謀殺のチェス・ゲーム』(渡邊利道)

《プログラムブック版「北海道SF大全」再掲にあたって》
 日本SF評論賞チーム有志は、去る2012年7月7日〜8日に開催された夕張での第51回日本SF大会(Varicon2012)を応援するために、大会参加者に限定配布された「Varicon2012プログラムブック」へ600字程度の「北海道大全」(北海道に関したSF作品のレビュー)を寄稿しました。
 それぞれの原稿が扱った題材は、Varicon2012の公式サイト(http://www.varicon2012.jp/index.html)で連載されたものと重複しますが、単なる縮約にはとどまりません。より広い読者へ向け、SFの意義を提示する開かれた文章を目指しました。このたび、その意義をご理解いただいた関係各位の許可を得て、「21世紀、SF評論」において、連載という形で再掲していきます。ご笑覧いただけましたら幸いです。(岡和田晃)


『謀殺のチェス・ゲーム』
作者:山田正紀
初出:祥伝社ノン・ノベル 1976
最新版:ハルキ文庫 1999
担当:渡邊利道
謀殺のチェスゲーム.jpg
 北海道奥尻沖で消息を絶った自衛隊の次世代哨戒機PS-8をめぐって、先鋭的な超理論を駆使する新戦略専門家(ネオステラジスト)の若きリーダー宗像と、元同僚で酒に溺れ脱落した天才藤野による驚天動地の頭脳戦を、自衛隊内部での勢力争いや現場でメカ&肉弾戦を演じる立花と佐伯という二人の怪物の対決、物語にさわやかな花を添える少年少女の淡いロマンスと彼らを追う暴力団の抗争といった要素も配して、北海道にはじまって沖縄の離島まで、日本列島を縦断するサービス満点の痛快娯楽アクション小説。
 一見まったくSFとは関係ないかのように見える本編だが、小説の鍵となる「ネオステラジスト」というアイディアが、数学におけるゲーム理論を、その実際に囚われない虚構的な、物語を推進するSF的ガジェットとして用いているところに最大の読みどころがある。このほとんど暴力的なアイディアが可能になるのは、山田正紀特有の《想像できないものを想像する》という言語のロジックの力によるイメージの超克という志向の故であろう。
 実際、ここでは「北海道」という土地の名も、その生々しい歴史が剥奪されたフィクションの地平でひたすら記号的に配置されるだけであり、その異様なまでの抽象性に、いかにもSF的な残酷さを読み取ることができる。本作を「北海道SF」として読み直してみるとことで、読者はSF的想像力の一面を再確認できるのではないだろうか。

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