2013年06月21日

『太陽の王子 ホルスの大冒険』(宮野由梨香)

《プログラムブック版「北海道SF大全」再掲にあたって》
 日本SF評論賞受賞者有志は、去る2012年7月7日〜8日に開催された夕張での第51回日本SF大会(Varicon2012)を応援するために、大会参加者に限定配布された「Varicon2012プログラムブック」へ600字程度の「北海道大全」(北海道に関したSF作品のレビュー)を寄稿しました。
 それぞれの原稿が扱った題材は、Varicon2012の公式サイト(http://www.varicon2012.jp/index.html)で連載されたものと重複しますが、単なる縮約にはとどまりません。より広い読者へ向け、SFの意義を提示する開かれた文章を目指しました。このたび、その意義をご理解いただいた関係各位の許可を得て、「21世紀、SF評論」において、連載という形で再掲していきます。ご笑覧いただけましたら幸いです。(岡和田晃)

『太陽の王子 ホルスの大冒険』
監督:高畑勲
初出:東映 1968
最新版:TOEI VIDEO 2002 ※ DVD 版
担当:宮野由梨香
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 「かつてアイヌの人々が北海道の大自然の中で――真夏の太陽と厳寒の吹雪の中で――魚をつき、けものを追って山野をかけめぐった、その満ちあふれる生命力を私たちは今の日本のおとなや子どもたちに伝えたいと思うのです。」(人形劇「チキサニの太陽」のチラシより)
 原作の人形劇の主人公オキクルミをエジプトの太陽神ホルスに、悪魔の妹の名をアイヌ語で春楡を表すチキサニからヒルダに置き換えても、この作品が「北海道SF」であるという本質は変わらない。
 アイヌ風衣装や、溯上してくる鮭を人々が歓声をもって迎える場面などに着目して言うのではない。この作品には「日本近代」と「戦後」の問題の濃厚な反映がある。「ぼくはかなりヒルダにほれていましたよ」(註1)と語る原作者、深沢一夫にとって、その舞台はどうしても「北海道」でなくてはならなかった。しかし、「アイヌは使っちゃいけないっていうお達し」(註2)のため、アニメ化にあたって舞台を移した。そのこと自体が、むしろまさに「北海道SF」たる所以なのだと言えよう。82分間の中に思弁的で濃厚なドラマが詰まっていて、日本動画史におけるメルクマールとされている。
 音楽は間宮芳生、高畑勲の初監督(名目は演出)作品にして、宮崎駿が場面設計を担当、森康二らが原画を描き、作画監督は大塚康生、「ヒルダは私のものだ!」と叫んだ熱心なファンが和田慎二。
 その問題提起の深さは、今もって色褪せていない。

※(註1)徳間書店「ロマンアルバム・エクセレント60」、P.186。
 (註2)前掲書、P.189。
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