2014年01月25日

『ヤマタイカ』(横道仁志)

《プログラムブック版「北海道SF大全」再掲にあたって》
 日本SF評論賞受賞者有志は、去る2012年7月7日〜8日に開催された夕張での第51回日本SF大会(Varicon2012)を応援するために、大会参加者に限定配布された「Varicon2012プログラムブック」へ600字程度の「北海道大全」(北海道に関したSF作品のレビュー)を寄稿しました。
 それぞれの原稿が扱った題材は、Varicon2012の公式サイト(http://www.varicon2012.jp/index.html)で連載されたものと重複しますが、単なる縮約にはとどまりません。より広い読者へ向け、SFの意義を提示する開かれた文章を目指しました。このたび、その意義をご理解いただいた関係各位の許可を得て、「21世紀、SF評論」において、連載という形で再掲していきます。ご笑覧いただけましたら幸いです。(岡和田晃)

『ヤマタイカ』
作者:星野之宣
初出:潮出版社 希望コミックス版(全6 巻) 
1987 − 1991
最新版:光文社コミック叢書“ シグナル” レジェンド オブ ヤマタイカ(全5巻) 2006-2007
担当:横道仁志
ヤマタイカ (第1巻) (潮ビジュアル文庫) [文庫] / 星野 之宣 (著); 潮出版社 (刊)
 沖縄の東に浮かぶ久高島で、六十年に一度執り行われるという伝説の秘祭「ヤマトゥ・祭(マテイ)」。この神事の中で、過去の卑弥呼の意識と交感した伊耶輪神子(いざわ・みわこ)は、卑弥呼の霊力を受け継ぎ、この現代日本で、縄文人の狂乱の祭りを復活させようと動き始める。
 沖縄を発端にするこの物語がなぜ北海道SFなのか。その理由は、本作のキーワードである「火の民族仮説」という古代史観にある。すなわち、かつて南方から火山の噴火を追いかけながら環太平洋火山帯を北上して来た原日本人・「火の民族」という存在があった。しかし彼らは、渡来系の「日の民族」によって南北に分断され、追いやられてしまう。つまり本作では、北海道と沖縄は、縄文民族を共通の祖とする姉妹のような関係にある。じっさい、作中で「火の民族仮説」の解説役をつとめる人物・熱雷草作は「阿弖流為(アテルイ)」の血を引くと語られる。北海道は、いわば、本作の裏テーマなわけである。とはいえ、『ヤマタイカ』の問題意識は、アメリカを打倒すべき支配体制の象徴とすることで、縄文系と弥生系、地方と本土の対立という狭い枠組みを超え、日本という国そのものを問い直す次元にまで拡張されていく。戦争が発生する以前の自由な神話世界を取り返そうとする身振りの中で、現代の閉鎖性を打破する。そんな気宇壮大な構想を遺憾なく絵にする星野之宣の筆力こそ、この伝奇漫画の醍醐味である。
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